『PERFECT DAYS』は、ウィム・ウェンダース監督と役所広司の共作による、日常の繰り返しの中に潜む美しさを静かに描き出す映画です。
この作品を通じて、公衆トイレの清掃員として働く平山の平凡な生活が、微細な変化と人間関係の深さを通して繊細に描かれます。
映画を観た私の個人的な感想としては、『PERFECT DAYS』はただの映画を超え、日常の価値を再考させる力を持っています。
本記事では、この映画が私に与えた独特の魅力と、平凡な日々の中に隠された美しさを見つけ出す旅についての感想を共有します。
映画『PERFECT DAYS』の概要
『PERFECT DAYS』は、ドイツの名匠ウィム・ウェンダース監督と日本の名優、役所広司がタッグを組んだ映画です。
東京の下町を舞台に、一人の男性の平凡な日常とその中での小さな変化を描き出します。
監督ヴィム・ヴェンダース
ヴィム・ヴェンダースは、ドイツ出身の映画監督、写真家、脚本家であり、現代映画を代表する一人です。
彼の作品は、深い人間性と独特の視覚スタイルで知られています。
以下は、ヴィム・ヴェンダースの経歴と彼の過去の名作の紹介です。
ヴィム・ヴェンダースの経歴
・1945年8月14日、ドイツのデュッセルドルフに生まれる。
・ミュンヘン大学とハンブルクの高等視覚芸術学校で学ぶ。
・1970年代初頭から映画製作を開始し、新しいドイツ映画の重要な一員となる。
尊敬する人
小津安二郎
ヴィム・ヴェンダースが尊敬する人物の中には、日本の映画監督である小津安二郎がいます。
ヴェンダースは小津の作品とその独特の映画製作スタイル、特に日常の静かな美しさや人間関係の繊細な描写に深い敬意を表しています。
小津の影響は、ヴェンダース自身の作品においても見られることがあり、彼は小津の映画を通じて映画製作における重要なインスピレーションを得ています。
サム・シェパード
また、ヴェンダースはアメリカの作家であり、脚本家、俳優でもあるサム・シェパードとも深い関係があり、彼を尊敬しています。
シェパードは『パリ、テキサス』の脚本を共同で執筆し、ヴェンダースとのコラボレーションは映画史に残る作品を生み出しました。
これらの人物は、ヴェンダースの映画製作における哲学とアプローチに大きな影響を与えており、彼が尊敬する重要な人物として挙げられます。
過去の名作
⚫️『パリ、テキサス』(1984)
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。
失踪した男が家族と再会するまでの旅を描いたロードムービー。
⚫️『ベルリン・天使の詩』(1987)
ベルリンを舞台に、見えない天使が人間の悲喜こもごもを見守る物語。
ヨーロッパ映画賞で監督賞を受賞。
⚫️『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)
キューバの伝説的なミュージシャンたちを追ったドキュメンタリー映画。
アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネート。
⚫️『アメリカの友人』(1977)
パトリシア・ハイスミスの小説「リプリーのゲーム」を基にしたスリラー。
ドイツ映画賞で監督賞を受賞。
⚫️『ハメット』(1982)
フランシス・フォード・コッポラのプロデュースで、ダシール・ハメットの世界を描いたノワール映画。
ヴィム・ヴェンダースの映画は、彼の独特の視覚的スタイルと人間の深い感情を探るテーマで高く評価されています。
彼の作品は、映画だけでなく写真やドキュメンタリーを通じても、世界中の観客に影響を与え続けています。
脚本 ヴィム・ヴェンダース・高崎卓馬(共同脚本)
映画『パーフェクトデイズ』の背後には、ヴィム・ヴェンダースと高崎卓馬の共同脚本という、特別な制作経緯があります。
このプロジェクトは、最初からヴェンダースが監督として日本に招かれ、役所広司の主演が決定していたという、非常にユニークなスタートを切りました。脚本の執筆は高崎卓馬が担当し、役所広司以外のキャスティングについても、ヴェンダースと高崎の緊密な協力のもと、非常に魅力的なキャストが集まることになりました。
ヴェンダースにとって、海外で映画を撮るという経験は、過去に苦い記憶を伴うものでした。
しかし、『パーフェクトデイズ』においては、彼の映画制作に対する情熱と、日本という文化的背景への敬意が、これらの挑戦を乗り越える原動力となりました。
特に、東京の公共トイレをリノベーションする「THE TOKYO TOILET プロジェクト」を映画の主要なロケーションとして取り入れることは、都市の再生というテーマを映画に深く組み込む独創的な試みでした。
撮影期間はわずか17日間という短さで、ヴェンダースはこの制約を冗談交じりに「『ワイルド・スピード』のように爆速で撮影した」と表現しています。
この限られた時間の中で、ヴェンダースと彼のチームは、即興的な撮影手法を駆使して、映画のリアリズムと詩的な美しさを高めました。
また、ヴェンダースの妻であるドナタ・ヴェンダースも撮影に参加し、映画のビジュアル面に大きく貢献しました。
『パーフェクトデイズ』の制作経緯は、異文化間のコラボレーションと、映画制作における創造的な挑戦が生み出す可能性を示しています。ヴェンダースと高崎卓馬の共同脚本は、彼らの異なる文化的背景と映画に対する共通の情熱が融合した結果であり、観る者に深い印象を与える作品へと昇華されました。
参考記事
ノスタルジックでメランコリック、ピュアな人生讃歌『PERFECT DAYS』
物語の魅力 平凡な日常の中の非凡な発見
『PERFECT DAYS』の中心には、公衆トイレの清掃員として働く平山がいます。
彼の日常は繰り返しの連続ですが、映画はこれらの繰り返しの中にある微妙な違いや新鮮さを見つけ出します。
平山の静かな生活には、周囲の人々との関わりや小さな出来事が彩りを加え、彼の内面や人生の変遷を垣間見せてくれます。
私は最近、ミニマリストの生き方に興味があり、書籍やYouTubeを見ることが多いのですが、平山の生活はミニマリストとしても完璧に洗練されたものでした。
無駄のない日々のルーティンが美しく描かれています
ロケ地巡り 映画の舞台、東京の下町を歩く
映画は台東区、墨田区、江東区など、東京の下町を巧みに舞台として使用しています。
これらのロケ地を訪れることで、観客は映画のシーンを実際に体験し、平山の日常により深く没入することができます。
STAYCATIONの記事では、これらのロケ地を巡る情報が豊富に提供されており、映画のファンなら一度は訪れたいスポットが満載です。
先日、日本最古の地下商店街として知られる浅草地下商店街に行ってきました。
地下鉄銀座線に直結しているので、急に目の前に広がる異空間とのギャップが面白いです。
私が訪問した日は営業している店舗と閉まっている店舗が半々位でした。
普通にお客さんが入っていて元気に営業している様子が頼もしかったです。
面白い店もあり、味のある商店街です!
残念ながら、平山行きつけの居酒屋はお休みでした。
銭湯で1番風呂を楽しんだ後、自転車でここに来るのが彼の日課です。
いいですね〜
映画『PERFECT DAYS』の世界観を彩るビジュアルと背景情報
ここでお伝えしたいのが、PERFECT DAYS公式サイトです。
映画のビジュアルや雰囲気を伝えるために、音と、文字、ぼんやりした映像を駆使したコンテンツを用意しています。
私は映画を観たので、脳内で細かく再現された感覚に驚きました。
ぜひ、一度は覗いてみてください。
また、THE TOKYO TOILETも、映画で描かれる公衆トイレの清掃員という職業に関する背景知識を深めるのに役立ちます。
観客に与える影響 日常生活への新たな視点
平山という人物像は、現代社会における喧騒と速度から一歩引いた、静謐な生活を体現しています。彼にとって、刹那的な興奮や物質的な豊かさは必要ない。自然の美しさに心を寄せ、空を眺め、木を観察し、古本屋で見つけた本に没頭することで、彼は生きる喜びを見出しています。平山の生活は、外見上は質素かもしれないが、内面的な豊かさと満足感に満ち溢れているのです。
彼の身だしなみの整った姿や、機能的に整理整頓された生活空間は、外部の世界に対する彼の内面的な秩序と調和を反映しています。同僚との関係においても、適度な距離感を保ちつつ、人間関係の質を大切にする姿勢が見て取れます。これらはすべて、平山が自分自身との関係、そして周囲の世界との関係をどのように築いているかを示しています。
寂しさを感じることなく、平山が毎朝見せる生き生きとした表情は、彼が日々の生活から真の満足と喜びを得ていることの証です。この姿は、物質的な豊かさや社会的な成功を追求する現代人にとって、深く考えさせられるものがあります。平山の生き方は、私たちに対して、生活の中で真に大切にすべきものは何か、そしてどのようにして心の豊かさを育むことができるのかという問いを投げかけています。
まとめ
『PERFECT DAYS』は、日常の繰り返しの中で見つける小さな喜びや変化を通じて、生活を丁寧に送ることの大切さを伝える映画です。
役所広司の卓越した演技と、東京の下町が織りなす背景が、この物語をよりリアルで感動的なものにしています。映画を見た後、観客は自分の生活を新たな目で見つめ直し、日常の美しさを再発見する旅に出ることでしょう。
この記事が『PERFECT DAYS』の魅力を伝え、より多くの人にこの映画を観てもらうきっかけになれば幸いです。
さあ、あなたも日常の美しさを再発見する旅に出ませんか?
公式サイト PERFECT DAYS
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